夢の中で、自分はまだ友と笑い合っていて。
夢を語っていて。
今は亡き、淡き思い出を懐かしむように、普段笑わない彼の笑顔がはっきりと残った。
「憎と哀」
(私、は・・・)
ここはどこだろうか。
記憶にない。
いつの間に帰った?
違う。
見覚えのない場所。
「起きたか」
ふん、と鼻を鳴らして立っていたのは自分の敵、であった男。
「伊達、政宗・・・」
声に出して初めてはっと気が付く。
「ッ貴様・・・!何のつもりだ・・・!!」
食ってかかる自分に、政宗は冷静に冷たく答えるだけだった。
「泣き崩れる貴様を拾ってやっただけのこと。別にどうというつもりでもないわ」
ふー、と長いキセルで煙草を吹かしながら近寄ってくる。
「感謝くらいして欲しいものじゃ」
くん、と顎を掴み上を向かされたかと思えば、その手はそのまま濡れた目元を拭った。
「・・・何のつもりだ」
「私を助けて何の得になる」
ましてや、つい先日まで敵同士。
何をしようというのか、見当もつかない。
「馬鹿め。もう全ては終わったことじゃ。あの、愚かな男の死をもってな。貴様を助けたのはただの気まぐれよ」
「お前に三成の何がわかるというのだ・・・ッ!!利に走った貴様などに、何が・・・っ」
再び涙が流れた。
「そんなもの知らぬ。一番解せぬのは貴様よ。何故今になってそんなにも後悔する?」
ぐ、と手を強く握りしめた。
そんなこと。
「―貴様には」
「関係ない、か?」
ふん、と政宗は鼻を鳴らす。
手が顔から離れ、その手は思ってもみない行動をした。
後頭部を引かれ、頭が政宗の胸へと沈む。
政宗に、抱かれる形となった。
「吐き出せ。全部吐き出してしまえ。」
―そうしたら、
もとのお前にもどれるから―
そう言って慰める、竜のその手は優しかった。