登城中の伊達政宗が上杉領のすぐ近くで倒れたという話を直江兼続が耳にしたのは丁度正午を過ぎたころだった。

そこまで心配することだろうか、と思いつつ、兼続はいてもたってもいられなかった。














































「政宗!」

人払いのされた部屋に入ると、厚めの布団に入った政宗がいた。

寝ているのか、返事はない。

僅かに呼吸が苦しそうであった。

そっと近寄り頬に触れりと、熱があるのか熱く感じる。

夢でも見ているのか、政宗の手が宙を泳ぎ、兼続の手に触れる。

「政宗、しっかりしろ―・・・」

その手を握り返して、兼続が言う。

政宗の口が、小さく形だけ作られる。

「ははうえ」と。

うなされるほど酷いのか。

もっと、軽い症状だとばかり思ったのに・・・

急速に芽生えた焦りと不安を打ち消すように、手を更にを強く握りしめた。




























丸1日、兼続は政宗に付きっきりでいた。

寄り添って手を握れば政宗も安からに眠った。

大分状態も落ち着き、すうすうと可愛らしく立てる寝息を聞いていると、兼続もなんだか落ち着いた。

普段の憎まれ口とはかけはなれた寝顔に、兼続の頬が緩む。

気分が落ち着くと眠気が襲ってきた。



―・・・私が駆け付けたと言うと、政宗は喜んでくれるであろうか・・・



指先から伝わる暖かな熱に安堵しつつ、兼続は睡魔に身を委ねた。




















「ん・・・」

自らの上に何か重みを感じて、政宗は目を覚ました。

目に映るのは、艶やかな黒髪。

それが兼続のものだと認識するのに時間はかからなかった。

ふと見ると、右手が強く握られている。

長時間握られていたことがわかるほどに互いの体温が溶けて、自分の熱なのか兼続の熱なのかわからないほどに熱い。

寝顔の美しさにどきりとして、空いている方の手でそっと髪に触れてみた。

さら、とながれる髪を辿って鼻筋から、唇に行き着く。


接吻したい。


そんな感情を、きっと何ヶ月も逢瀬がなかったからだと言いくるめる。






突然、びくっと肩が震えて兼続が目を覚ました。


「いかん、寝て―・・・政宗?起きていたのか?」

己をじっと見つめる政宗に気がついた兼続が、政宗の額に自分の額でに触れた。

その行為に、政宗は少し唇を尖らせた。

「・・・子供扱いをするな」

余程恥ずかしいのか、普段なら蹴りとばしてやるところだ、と政宗は付け加えた。

「子供のようなものだ―、熱は大分下がったようだな。一時はどうなるかと思ったが・・・」

ふ、と兼続が柔らかく微笑んだ。

政宗がその頬に触れようとした瞬間、兼続が「あ、」と言って後ろを振り返った。

む、と政宗が眉を寄せたが、兼続はそれに気がつかない。

「政宗、薬を・・・」

振り返る兼続に、政宗はプイと顔を背ける。

「いらん」

「何を言っているのだ。そんなことでは完治しないぞ」

「いらんと言ったらいらん!」

政宗は大きく吠えたあとで、

「苦いのは嫌いじゃ」と小さく付け足した。

相変わらずの我が侭っぷりに、兼続からため息が出る。





ならば致し方無い。

兼続はその薬と水をを、自らの口に注ぐ。

ぐい、と政宗の顔を掴んでこちらを向かせると、左手で押さえた。




「!、貴様、何・・・」

を、と言いかけた政宗の口を自らの口で覆い、口移しで薬を流しこむ。



「っ・・・ぅ、」


政宗の眉がきつく寄り、薬の苦さに不快そうに歪む。

だがそれは嚥下され、政宗の喉を降りていく。





唇を離そうとしたその瞬間、政宗の舌が歯列を割って兼続の舌を絡め取った。

元より口付けは深かったため、舌は難なく口内を自由に動く。

とっさに、兼続は身を引こうとするのだが、政宗の左腕が首に巻き付いて、もの凄い力で引きよせられる。

「むっ、んん!ぅ、ん」

口内の苦味が消えるまで擦られ、溢れた唾液がつつ、と落ちていく。



「な、・・・にをっ」

ようやく開放された口で酸素を吸いながら、兼続がきっ、と政宗を睨む。

「口直しじゃ」

ふん、と政宗が鼻をならした。

呆れた、と兼続が息を吐こうとすると、政宗の右手が自分の着物の帯を緩め、肌に触れようとしているのに気がついた。

「政宗!」

慌てて兼続が逃げようとするのだが、政宗はそれを許さない。

「誘ったのは、貴様じゃ」

ぐい、と再び口付けられ、誘ってなどいない!という抵抗の言葉も、そのまま飲み込まれる。




政宗の手が兼続の胸の粒を取り、愛撫する。

「ん、ふぅ、っ」

白い肌にそこだけが赤く、そして固くしこり、兼続の欲を表しているようだった。

口付けは激しいままだったので、兼続はどちらを意識してよいのかわからない。

ふと、触れた肌が、唇が、腕が、まだ熱を帯びていることに気がついた。

がはっ、と兼続が渾身の力で政宗を振り払う。



「だ・・・め、だ」


ば、と兼続が前を押さえながら言おうとすると、政宗がちっ、と舌打ちをして、よろめく兼続を壁に打ち付けた。

「・・・っ、く」

その拍子で二人して壁に倒れ込んだ。



背中を打って動けないでいる兼続の両手首を掴んで、ぐい、と上に上げる。

政宗はそのまま、乱れた着物の舌の鎖骨のしたに優しく歯を立てて、皮の薄い部分をくすぐるように舐めた。


「だ、めだ・・・、まさ・・・むね、っ」




止めさせなくては。


そう思う一方で、いつもよりも熱い政宗の舌が与える刺激が気持ち良い。


は、は、と僅かに上がる息と共に舌が肌を愛撫する。



「やめ、・・・っ」

息を詰めた兼続を見つつ、政宗の空いた手が兼続の中心に触れる。

半ば熱をもつそこは下帯の上からの愛撫も貪欲なまでに受け止めた。

眉を寄せた兼続の口から欲に濡れた吐息が出、もっとと言わんばかりに腰を揺らした。




・・・引き返せなく、なる・・・




まどろむ思考で兼続は思った。

政宗が兼続の男根に触れれば、確実に引き返せなくなる。

政宗が胸の飾りに歯を立てると同時に、左手の指が帯のなかに入り、会陰を優しくえぐった。

「ぅ、んっ・・・ぁ」

袋をやわやわと揉まれ、根元を擦られただけで兼続のモノは瞬くまに勃起する。

先端から滲出た透明な液体を絡め取っては、それを見せつけるように指に馴染ませた。

羞恥に、兼続の頬に紅がさす。

政宗はそんな兼続を見るのが好きだった。


己のあさましさ、貪欲さに、行為に恥ずかしさを感じ、眉を寄せる瞬間がこの男は一番美しい。


「ふ、ぁあ・・・んっ」

けして激しくない愛撫は兼続をじわじわと追い詰めて行った。

ぐい、と強引に下帯を取り払った政宗が、兼続の手を押さえていた方の手で片足を持ち上げた。

それによって、兼続は下をみれば、己の起立したモノが嫌でも目に入る。

「・・・ッ」

かぁ、と耳まで赤くなり、手の甲を鼻に当てて顔を隠した。

つぷ、と侵入した政宗の指が、入口を広げようとナカを動いている。

そう自覚すると、眉を一層寄せて、大きく息を吐いた。

その様子に何を思ったか、政宗が背を伸ばして兼続に近付いた。

「?、ふ――・・・ぃ、あうっっ」

最奥を目指して指を入れるのと同時に、兼続の手のひらを温かい舌が這った。

ぺろ、と掌を舐め、指先を口に含んだ。

くちゃ、と音を立てて、指先が熱い口内へと導かれ、歯で噛んでは舌先で愛撫する。

1本目、2本目と指を移動していく度に、中の指も増えて行く。



「ぅ、は・・・ぁ」


溜っていく快感に、兼続の指先が震えた。

柔らかく溶けたそこは、ひくつきながら政宗の指を奥へと引き込む。

「ん―・・・ぁっ」

つぷと指が抜けていく感覚にどこか淋しさを感じると、政宗の頭がぽす、と兼続の肩に落ちた。


「政・・・宗?」



「少し、疲れた・・・」

病み上がりで起きているのが流石に疲れたらしい。

落ちた頭は少しも動かない。

「だから・・・駄目だと言ったのだ・・・」

兼続が僅かに咎めるように言うときっ、と政宗が睨んだ。

「は・・・此処まできて止めろと申すか」

「そうは、言わん」

軽く息を吐いた兼続が、政宗の肩をゆっくりと倒した。

そして自分は政宗の胸に手をついてその腰に股がる。

瞳を伏せて、ひと呼吸置いた。

「お前は、動いてはならん・・・」

そう独り言のように囁く兼続が帯をまさぐるのを、政宗は呆然と見ていた。

兼続の指に肉棒をやんわりと包まれて、政宗のモノがビクビクと脈打つ。

その手応えを感じた兼続はゆるりと手を上下したあと、腰を浮かせて先端を合わせた。

「ん・・・あぁ・・・」

僅かに先を飲み込み、自分を満たす質量に兼続の体が細かく震える。

両足を投げ出した政宗はその様子を唾を飲んで見つめた。

「は、んっ・・・」

ゆっくりと、少しづつ兼続の腰が落ちて行く。

じれったい感覚に、政宗が僅かに腰を動かした。

「っ―・・・ぁ、あっ!」

それが堪らぬ所をかすめたようで、兼続の力が抜け一気に腰が落ちる。

びくん!と兼続の体が弓なりに反った。

快感が全身を駆け抜け、射精しそうになるのをギリギリで耐える。

政宗もまた、いつもよりも強い締め付けに眉を寄せて耐えていた。

「は、ぁ・・・あ、ぁ・・・っ」

胸に着いた手が小刻みに震え、それを隠すように強く握り締められた。

「んっ、・・・ふ、ぁ」

ゆるゆると兼続が腰を動かす。

小さかった動きはだんだんと大胆になり、ぐちゅぐちゅと卑隈な音をたてた。

政宗は自分の上で乱れる兼続から目が離せずにいた。

赤く染まったふくよかな唇は半分ほど開いたままで、政宗が時折声を漏らすと得意気に笑った。




「 かね、つぐ・・・」



度重なる締め付けに、政宗のモノは限界だった。

「ぁ、ふ・・・っ政宗・・・ん、もう、か・・・?」

「ああ・・・」

こくん、と頷くと兼続はギリギリまで抜き、一気に腰を下ろした。

そうやって奥の奥まで導けば、政宗が小さく息を飲んで達する。

体の中に熱いものがどくどくと脈打ちながら放たれ、満たされていくのを感じた。






「ぁんん・・・っ、は、ぅあっ」

政宗が兼続の男根の先端を擦ると、兼続も少し遅れて吐精する。

政宗のモノを抜いて、隣に倒れ込むと政宗が兼続の汗ばんだ髪を撫でた。

「無理を・・・しすぎじゃ・・・」

「お互いさまだろう・・・」





お互いの体温が溶けるように同じになったのに安堵して、二人は静かに瞳を閉じた。
















微熱、じゃないんだけど
えーと、あの・・・無理だろ!とかはあれ、その・・・愛の力で無視してください
上になった兼続が描きたかったんです