「愛してください、愛をください」/キス、キス、キス/僕の声/遊月夜/白無/どうか、朝まで覚めぬ夢を見て/
秋風/この 「 しあわせ 」/

一面が真っ白な雪の中、青い影が一つ、浮かんでいた。



















白無




























雪が降っている。

ただ降っているというには激しく、吹雪いているというには穏やかに。

何もかもを覆い隠すように、雪が降っていた。


























雪原のなか、政宗は一人立っていた。

来た時に自分がつけた足跡も、既に消えていて、ここがどこなのかもわからなくなりそうだった。




持っていた物は全て失った。

家も、家臣も、地位も、夢 も。

政宗は大名であった。

父から家督を譲り受け、領地を、守ってきた。





あの日、戦に負けるまでは。

ふと、政宗は片方しか無い目を閉じた。

雪に埋まる両足どころか、既に全身の感覚が無い。

ただ、足を動かそうとすれば痛みが走るだけだ。

今でも思い出すのは、あの、敗北を知った時のこと。









『南西砦、崩落―――! 政宗様、ここもそう長くはもちませぬ・・・!』









小十郎の悲痛な、悔しさに溢れた声が聞こえる。

本陣を除く全ての砦が、落ちた。

多くの武将も捕えられ、援軍も来ない。


確実な、敗北。


『お逃げください!』







逃げ出した。



自分は、そう言われて、家臣を捨てて逃げ出したのだ。

















・・・―お逃げください、

貴方様がいれば、まだ希望は持てます

まだ、諦めてはなりませぬ

政宗様がお手打ちにあうなど、あってはなりませぬ―・・・

















その後、小十郎達がどうなったかは知らぬ。

ただ、戦は完璧に伊達の負けだった。




―生きて、わしに何ができようか・・・




こんな、ただの子供に。

辺りは静かなものだった。

雪が降る音さえない。

吹雪の為、この辺り一体が動きを無くし、一時ではあるが、戦もない。






目を開けると、眩しいほどの白が飛び込んでくる。

しろ。思い出すのは、あの男。



伊達を、政宗を落としたあの、直江兼続。



今はもう、憎いとは思わない。

思うのかもしれないが、それを覆い隠すほどに、あの男を恐ろしいと思う。

あの戦、数ではこちらが上回っていたのだ。

政宗は布陣も抜かりなく、準備した。

だがそれを、兼続はいとも簡単に覆した。


完敗だった。


政宗は口から息を、ゆっくりと吐いた。

吐息が白く染まり、そして溶けていく。







いっそこのまま倒れてしまおうか。



戦場で死ねないのは残念だが・・・




と、もう一度、白い世界から闇へと下る。




空耳であろうか、ふと、馬が走るような、音がする。

懐かしい・・・そう、思ったすぐ後に、体がふわりと、宙に浮いた。






「伊達の旦那、探したぜぇ?」



前田慶次




政宗の目が見開かれた。

慶次が、政宗の体をすれ違い様に抱き上げたらしい。


「離せ」

「悪いがそれは出来ないねぇ。うちの殿様がアンタに会いたがってるんでね」

ぴく、と政宗の眉が上がる。

「兼続が?今更わしになんの用じゃ。」

余程わしを殺したいのか、と政宗は嘲った。

「それは、兼続本人に聞いてくれ。それにお前さんだって、自分の家臣がどうなったか、気になるだろう?」

びく、と政宗の肩が震えた。



「・・・降ろせ」




政宗が再度言った。

だがそこに先程と同じような意味合いは無く。

それを感じた慶次は、馬を止め、その横に政宗を立たせた。

「ついて来る気になったのかい?」

政宗は真っ直ぐに、慶次を見据えた。

「いいだろう―わしを、兼続の元へ連れて行け」



その瞳には、以前と同じような光がやどっていた。
















エンパ設定です。直江出てないけど兼政
時間と妄想とやる気があったら続き書きまする・・・(…)

<<                  >>              <白無>