「愛してください、愛をください」/キス、キス、キス/僕の声/遊月夜/白無/どうか、朝まで覚めぬ夢を見て/
秋風/この 「 しあわせ 」/

事の発端は些細なことだった。

疲れを癒すのにいいですよ、と偶然勧められた温泉に足を運んだだけなのだがそれは思いもよらない展開へとなったのだった。























秋風
























暫くぶりに自由な時間を手にいれた幸村は一人、ふらりと旅をしていた。

短いとはいえ、こうして気を休めることが出来るのは嬉しい。

先日聞いた温泉でも尋ねてみようと、幸村は紅葉に染まる紅葉を眺めながら馬を走らせた。








ついたのは小さな宿場のようなところだ。

見たところ、人が込み入った様子もなく、上客が泊まっている様子も無い。

ゆったりと過ごすには適したところか。

中へ入るとそこは過ごしやすく、部屋から見える庭園は静けさを保ちながら尚美しかった。

女将が汗をながしてくる間にお部屋の準備をさせていただきますと言うので、幸村はさっそく風呂場へと向かった。














そこが、幸村にとっての地獄となることを知らずに―・・・。





















脱衣所は質素なものだった。

時間が時間なためか、客はいないように思える。

着ていた着物を脱ぎ、彼のしなやかな筋肉がついた体が現れる。

幸村はまだ若いが、彼の体には戦場での傷がいくつかついていた。

もっとも、そう多くはないが。

人はいないだろうと思いつつ、腰に軽く布を巻き、浴室に入る。

露天風呂ながら湯気がたちこめるそこは、美しく心地よい場所だった。

体を軽く洗い流して、熱い湯につかろうとした。










そのとき。













「・・・幸村?」
















聞きなれた、声がした。








































幸村は気がつかなかったが、風呂には先客がいた。

石田三成。

いくら無二の友とはいえ、こんな風に風呂に入るのは初めてだ。

ただでさえ美しく、魅惑的な美貌が、一糸纏わぬ姿で、白い湯につかっている。




























落ち着け、落ち着け自分ッ!!




突然の事に焦った幸村は、軽くパニック状態だ。




見たい。けど、直視できない。






そんな葛藤を繰り広げ、最終的には友人をそんな風に捉えるだなんて不義だ、となるべく何も考えないようにした。

とはいっても、体―というか理性意外の部分が反応してしまうのだからしょうがない。

幸村は心拍数が上がるのを感じた。

白くて、きめの細かい肌が、しっとりと汗ばんでいる。

そう考えるだけで、あらぬ想像でもしてしまいそうだ。

お互いたいした会話も無く、ただ時だけが過ぎていく。

情けなくも、幸村はのぼせ上がっていた。












正直、もう出たい。






















「・・・幸村は、」


三成がそっと、幸村を見たあとで口を開いた。

「・・・良い体をしているな」

ぐっ、と幸村は吹き出しそうになるのを堪えた。

そういう意味が無くとも、三成が口にすると、淫隈な意味を持つ気がしたのだ。

体温がさらに上昇するのを、幸村は感じた。







「俺は、お前みたいに筋肉がつかん・・・だから、あいつらにも馬鹿にされるのだ・・・」





ふう、と三成がたも息をついた。

幸村は熱い頭で、三成に告げる言葉を考えた。

限界が近いかもしれない。世界が、チカチカと赤いのだ。




「・・・そんなものは無くとも、三成殿は素晴らしい才能をお持ちですよ。所詮、泰平の世では、力など・・・」



これは、本心から出た言葉だった。















「・・・そう、思ってくれるか」

「はい。」

ぽた、と幸村の額から汗が落ちた。


ぐるん、と目が回るのを感じる。


「そうか・・・」

ふと、三成が目を軽く伏せて下を見た。









「幸村、有難う」



























―――あ、




笑った。と、そう幸村が認識するのと、世界が遠のくのはほぼ同時だった。





























涼しい風が、頬を撫でている。


気持がいいな・・・


そう思うと、急速に意識が戻ってきた。






がば、と身を起こす。




起こした瞬間に、ぐら、と視界が歪むのを感じた。




「おい、」

すっ、と伸びてきた冷たい指に額を押され、再び体を下に戻される。

ぽす、と落ちた先が誰かの太ももであるのに時間はかからなかった。







「まだ寝ていろ」

ぶっきらぼうな調子の声が聞こえる。


「み、つなりどの!?」

驚いた幸村が辺りを見渡す。

どうやら、部屋の中のようだ。

障子が開けられ、風の通りが良くなっていた。

三成は扇を手に、幸村を扇いでいた。

もちろん、二人とも浴衣姿で。

「わ、私は・・・?」

「風呂場で倒れた。のぼせそうなら早く言えば良いものを―お前を運ぶのは、大変だったんだぞ」

聞いて、幸村は恥ずかしくてしょうがなかった。




なんと情けない・・・




かぁ、と顔が赤くなるのを感じた。






「・・・誠に、申し訳なく・・・」

「冗談だ。幸村は割りと軽いのだな」

ふ、と三成が笑った。

幸村が先程見たように、綺麗な笑顔で。

思わず、幸村はみとれてしまう。





紅葉した紅葉が、夕日で更に赤く染まっていた。




「良い景色だな。」


「ええ、本当に。」




穏やかな顔で、三成が幸村の顔にかかった髪を優しく払った。















「今一緒にいるのが、お前でよかった」
















秋の少し冷たい、爽やかな風が吹いた。





































幸三でした。この二人はなんか、もうこんな感じで言いと思う(どんなですか、どんな)
幸村が変態くさくてすみません・・・ホラ、幸ちゃんはまだ若いから(笑)
あっちなみにこれは半パラレル世界という設定です
戦国であって戦国でない、無双であって無双でない、そんな感じ(わからない!)

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